隣地から少し低い敷地
敷地は西側と南側隣地の地盤面より少し低く、ブロック塀に囲まれ、必要な床面積を確保すると、隣の住宅外壁面も境界線に近いので1階の陽当たりはあまり期待できません。
そこで住まい手と相談し、1階に寝室と水廻り(洗面、浴室、トイレ)を、2階にリビング、キッチンを設けることにしました。
外部とのつながりを考えるとリビングは1階の方が好ましい事が多いのですが、住宅密集地や庭の広さを確保できない場合は2階に設けた方が陽当たりやプライバシー面で良い場合もあります。
敷地は西側隣地より低いので西側から見るとブロック塀の上部と2階のデッキテラス床の高さがほぼ同じ高さになります。
屋根は高さ制限に合わせ北から南にあがる形状とし2階の天井を高く、一部を小屋裏収納として利用します。 外壁はガルバリウム鋼板サイディング、開口部はアルミサッシと一部に準防火地域に対応した対応の木製サッシを採用しています。
仕事場になる土間ワークスペース
建主さんは自宅で仕事をすることもあるので、仕事のスペースが必要とされました。
広さはデスクワークができる程度であれば充分なので室として計画せず、玄関の土間空間に5帖程度の広さを確保しワークスペース(仕事場)としました。
土間はタイル貼り仕上げとし、上足部分との段差は設けず一体的に感じられるようにし、ワークスペースの玄関ドア側には目隠しを兼ねた輻射暖房パネルを設置しました。階高を最小限にするため構造梁を露出させた化粧仕上げとし、天井高さは2.1mに抑えています。2階への階段はワークスペース側の段板を片持ちにし上部窓からの外光を採り入れています。
天井の高い2階リビング
2階はリビング、キッチン、ライブラリー(家族の共有スペース)のワンルーム空間です。リビング部分は高度斜線制限に合わせて天井高さを2.2から3.9mと高く確保しました。
居間の南面にはスノコ状のウッドデッキテラスを設けました。 ここは周辺敷地の空いた場所に位置し、視線、風が抜けます。上部にも高窓を設け明るさ、暖かさを室内に採りこみます。外部には庇をまわし夏の日射をやわらげています。
床材は全面ナラ無垢フローリングとし、リビングには床暖房を敷設しエアコンと併用しています。デッキテラスに面する開口部には防火設備に対応した木製サッシを採用しました。
使い方に合わせた造作キッチン
キッチンはリビングと一体的に計画し、キッチンカウンターは家具のように造作しました。既成のシステムキッチンは奥行が600か650mmが一般的ですが、シンク先も利用しながら全面を窓にして外を眺めながら使いたいという要望から、カウンターの奥行は750mmという特別なサイズで造りました。
家全体の家具や建具はタモ材で造っていますが、キッチンひきだし等の面材もタモで統一しました。バックカウンターも同様に造作し側面の壁色と合わせて背面タイルでアクセントをつけています。吊戸下には扉に隠れるように棚下照明を設置しています。
柔軟な間取り
家族が共用で使うライブラリーはリビングに続くオープンスペースとし、間仕切建具は設けていません。また、寝室へはクローゼット内部を通り抜けてアクセスするなど、部屋としての区画や配置にこだわらず柔軟なプランで限られた面積を有効利用するようにしています。
光を取り入れる階段
陽当たりが期待できない敷地条件なので階段を室として計画してしまうと室内に暗い所が多くなりがちです。そこで階段外壁側の窓からの光を取り入れるために階段の蹴込(けこみ=垂直部分)を無くしました。1階は片持ちにして、より遮る部分が少なくなるようにしました。
一体的な水廻りスペース
プライベートな水廻りは細かく分けず洗面、脱衣、トイレを1室にまとめ、浴室もハーフユニットバスを利用。バス腰壁上部は強化ガラスとし視覚的にワンルーム空間としました。洗濯機はこのスペースの一角にあり、ここから物干のあるテラスに直接でることもできます。